論考-010 中国資本の土地買収についての一考察

右傾コンテンツの中で度々目にする中国資本の国土買収(主に北海道)については、根拠のない陰謀論が飛び交っている。これらについて、投資や個人利用という以上には、明確な理由が見出しにくいため、中国共産党の日本侵略のような語り口が横行している。

そこで、これらの土地買収について、私見を述べたい。

 

まず、大前提として、土地の買収を「侵略」のようにとらえるのは全くのナンセンスなので、こうした論調のメディアは相手にしない方が良い。

安全上の重要度が高い土地は別として、一般的に、土地を外国資本に買ってもらうことは、日本にとって利益になることだ。日本政府においても、安全保障や自然保護の観点からの問題のない土地については、外国資本への売却をむしろ奨励している。

そもそも日本は、土地の所有者不明地も多く、また土地を捨てたくても捨てられなくて困っている人も多い(そのため、土地を捨てられるようにする法改正が求められている)。こうした土地を外国資本が買い取って税金を払い、地域に投資をしてくれるなら、願ってもないことだ。

例えば、オーストラリアにおいては、積極的に外国人に不動産を買ってもらうため、高額の不動産投資を行った人にビザを支給している。これが、海外居住を求める中国の富裕層に大変な人気で、中国からの投資が集まり、オーストラリア経済に大きな利益をもたらした(クライブ・ハミルトン氏の『静かなる侵略』(Silent Invasion~China's Influence in Australia)を論拠に、中国がオーストラリアを内部から侵略しているという見方もあるが、近年、オーストラリアは中国への警戒を強め、コロナ対応でも中国に批判的)。

北海道は国内でも特に人口減少や高齢化による打撃を受けており、鉄道などのインフラが今後も更に縮小していくことが懸念されている地域である。北海道の一部では、すでに中国人観光客や、オーストラリア等からのスキー客が地域経済を支えていると言っても過言ではない。

 

・なぜ北海道なのか

では、なぜ特に北海道が中国資本の土地買収の対象となっているのか、その理由をいくつか考えたい。

(1)土地価格が安価である

都市と比較して、北海道の大半の地域の地価はかなり安価であり、不動産投資としては少額から行える。中国では、土地所有ということがそもそもできない(中国の土地は個人ではなく、共産党の持ち物)ので、土地所有自体に魅力を感じる中国人の投資先になりやすい。

 (2)中国人観光客向けのサービス提供

2008年に中国ドラマ「狙った恋の落とし方。」がブームになると、中国国内で北海道観光がブームとなった。中国人観光客数が増加したため、当然、現地での中国人観光客向けの観光サービス(宿泊施設等を含む)の需要が増加した。このため中国資本による土地買収が進んだと考えられる。

日本人の海外旅行でも、現地の日系土産店が人気になっていることなどもある。また、北海道のニセコでは、オーストラリア人が運営する宿泊施設がオーストラリア人からの人気を集めるというように、当該国の視点からのサービス提供が大きな利益につながることもある。

この点、北海道の森林を買収する中国資本の多くが香港資本であることも、その証左と言えるだろう。香港の全人口の約3人に1人が毎年日本に旅行(ビジネス等を含む)をしている計算になるほど、香港にとって日本は身近な観光先である。

もし、中国共産党が日本の国防を脅かすために土地を買収するのであれば、一国二制度下にある香港ではなく、本土から買収を行うだろう。

 

(3)自然が豊かである

私が中国駐在の某省官僚に聞いた話では、中国の都会の若者には田舎の雰囲気を求めて日本を訪れる人も多い。急速に発展が進んだ中国の多くの都市では、高層ビルが林立し、高層ビルの密集度で言えば東京を含む日本の全都市に勝るだろう。そのため、中国人が東京を訪問しても、その広大さには驚いても、都市としては古くさく見えるという話もよく聞かれる。田舎や自然を求める中国人にとって、北海道は絶好の別荘地であるだろう。

中国による北海道の土地買収を批判する某大手新聞社の記事では、中国人が北海道に会員制ゴルフ場を作っていて、現地住民が入れないということを叩いていたが、なぜゴルフ場を作ってはいけないのか。そんなことしか批判できないならば、逆に安全だと言っているようなものである。

 

(4)地政学的に投資の価値が見込まれるため

また、地政学的な問題も考えられる。日本国内では軽視されているが、実は北海道は今後地政学的な重要度が高まる地域である。

温暖化により新たな運用が期待される北極航路によって、西欧と東アジアの航海距離は格段に縮まる。そして、この航路上、東アジアにかぶさる日本、特に北海道は現在のスエズ運河のような役割を果たすかもしれない。中国の一帯一路政策においても、北海道は極めて重要だろう。

北海道の釧路港などは航海上の要所として発展が見込まれるため、先だって中国資本が投資を行っているものと考えられる。

 

以上、一時間程度で書き上げたのでかなり雑駁ではあるが、土地買収についての私見を述べた。様々な意見が飛び交う中、中国に対する偏見から来る無根拠な論調への異論として参考になれば幸いである。

なお、国防上の要所や、資源を有する土地(もっとも、地下水等についてはその所有が及ばないが)の買収や森林伐採や廃棄物の投棄等の環境汚染がある場合については、状況が異なるため、問題がないとは言えなく、日本政府による一定の対応が求められるのも事実である。

論考-009 ネット右翼系コンテンツは異世界転生小説と変わらないのか

「外国人が日本をあこがれている系コンテンツ」が流行っているのは、日本の国際的な地位が低下する中、日本TUEEE(日本人の俺TUEEE)と思いたいため。


ネット右翼コンテンツも、社会の中で弱い自分が「中国人、韓国人よりもマシ」と思える娯楽コンテンツとして商売している。


…というのは、全く新しい言説ではありませんが、鈴木大介氏の以下の記事を読んで、それは肉体が弱体化することでも起こることなのかなと考えさせられました。


亡き父は晩年なぜ「ネット右翼」になってしまったのか

https://www.dailyshincho.jp/article/2019/07251101/?all=1


左翼系コンテンツより、右翼系コンテンツがネットで人気になるのは、危機感を煽り、単純な外の敵を設定して叩くという、楽に消費しやすいもので、自分が優越感を持ったり、興奮状態を味わえたりする娯楽性の高いものだからでしょう。


ネット小説で異世界に転生して主人公(≒自分)が無双するようなコンテンツが莫大な人気を誇っていることに通じるものを感じます。


異世界は現実ではないとわかっているので、自分が生きる現実の中で、どうやって自分が社会的に高くなるかを模索していくコンテンツ。


鈴木氏も書いているように、こうしたコンテンツは受けが良いので、商売として多く生産されます。


ときには内容の正確性よりも、どれだけ興奮できる内容かということを目的として、事実をわざと歪めて、悪い点だけを書いていることもあるでしょう。

そうなったとき、それはもはや異世界と変わらぬ、フィクションのようになってしまいます。


もちろん、中国・韓国にも批判すべき点はたくさんありますが、単に感情的に優劣をつける(民度がどうとか)のではなく、冷静に、相手の優れた点と劣った点を論理的に語る必要があるでしょう。


すでに、中国は日本よりも強国になっている(と考えるのが国際社会では一般的)のですから、冷静に相手の力を分析する必要があります。


あえて中国の故事を使いますが、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」です。

仮に相手を敵と捉えるとしても、相手の戦力を読み間違え、見くびったとき、そこにあるのは敗北でしかありません。


韓国が悪いのだとしても、一旦、韓国が悪いという感情は捨てて、情報を分析し、なぜ韓国が悪いのか、なぜ彼らはこうした行動をとるのかを考える冷静さが求められます。



なお、私も高校生の頃は『正論』や『Will』をよく読んでいたので、それらのコンテンツもだいたいわかっているつもりですが、様々な立場の意見に触れ、総合的に判断していった結果、それらは読まなくなりました。


このテーマはセンシティブなので、批判もあるかもしれませんが、私はニュートラルな立場から、海外の新聞等を読んで、客観的に日本を捉え、今何が必要なのかを考える必要があると思います。

東のオーストリアと南のオーストラリア

オーストラリアの名称の由来が、ラテン語の"Terra Australis (Incognita)"((未知の)南方大陸)だということはオーストラリア関係者には広く知られているところだろう。未知の南方大陸の存在は古代ギリシアの時代から提唱されていたと言われる。

 

"Australis"は「南の」という意味で、アウストラロピテクス(Australo(南の)pithecus(猿))の語源でもある。

 

ところで、オーストラリア(豪太刺利)とよく間違われるオーストリア墺太利)だが、実は語源からして全く同じなのだ。

 

印欧祖語(Proto-Indo-European)における"h₂ews-"(印欧祖語においてhの喉音は3種類あったとされる)が、両国名の語源だが、その意味は「夜明け」と「東」。

この語のイメージは「輝く」で、輝く太陽が東から上ってくるから「東」という意味を持つ。Aurora、eastなどの語源とされる。

 

印欧祖語から派生したゲルマン系の言語において、東にある地は"Ostarrîchi"(ラテン語で"Austria")と呼ばれたのである。つまり、ドイツから見てオーストリアは「日の出ずる国」なのだ。

 

この「東」の意味を持つ"h₂ews-"がラテン語において「南」の意味も持つようになった理由には諸説あるようだが、一説には、サハラ砂漠からローマに向けて吹く南風(シロッコ)が熱かったため、「輝く=熱い」というイメージから「南」を指すようになったとか。ラテン語で"auster"が「南の風」を指す言葉になっている。

 

オーストラリアとオーストリアは語源から見ても紛らわしい。

論考-008 なぜロンドン大学(通信)はコスパ最高なのか

今回は、私がグラデュエート・ディプロマ(GDip)を取得し、現在、大学院(法学)に通っているロンドン大学の通信課程がコスパ最強な理由を説明したい。

 

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ロンドン大学は、いわゆる日本でいう大学のような形での大学ではない。ロンドンにある複数のカレッジの集合体としてロンドン大学がある。

 

ロンドン大学を構成するカレッジのレベルはまちまちだが、中でも私がGDipを取得したロンドン・スクール・オブ・エコノミクスLSE)と現在所属する大学院のプログラムを提供しているユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)は世界大学ランキング(TIMES、QS)で東大より上位の、世界屈指の名門校である。

特にLSEは理系学部のない大学にもかかわらず、東大よりも上位になっている。日本で似た立場の一橋大学が同ランクでの評価が低いことを考慮すると、その凄さがわかる。また、LSEは社会科学(法学・政治学・経済学等)の分野でハーバード大学に次ぐ世界二位の地位を得ている。

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 ・QS大学世界ランキング(社会科学)

 

また、通信教育は質が低いと一般的に思われがちだが、ロンドン大学は通信課程の卒業生だけで7名のノーベル賞受賞者を輩出している。

 

ロンドン大学通信では、このように国際社会で通用する学歴を比較的簡単に手に入れられる。

英検1級レベルのリーディング力とライティング力は必要だが、国内の慶應義塾大学通信などと比べると遥かに卒業が簡単なのである。

国内の通信制だと、基本的にスクーリングが必修になっているが、ロンドン大学の通信講座(International Programmes)の多くのコースでは、定期テストの合格だけが卒業の基準になっている。

私がLSEでGDipを取得した際は、直前に2週間程度勉強して4科目の試験を受けただけであった。

すでに日本の大学を卒業し、学士を持っている人であれば、これだけで学士レベルのディプロマが取得できるし、2年間でその倍の授業を取れば学士も取得できる。

 

また、ロンドン大学通信は海外の大学の中ではかなり学費が安い。

GDip取得にかかった費用は合計で40万円程度であったし、修士号もコースによっては100万円程度で取得できる。

通信であっても海外大学では卒業まで200〜300万円かかることが珍しくない、また国内の国立大学でも通学であれば学士取得まで200万円以上、私立大学なら400万円程度までかかる。

 

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 (LSEのGDipプログラムの学費。実際には、これに加えてテストの受験会場での手数料が10万円程度かかる)

 

このため、英語さえできれば国内のいずれの通信大学よりもコスパが高いものになっている。

また、入学に必要な英語力も学士レベルではIELTS Overall 6.0と、比較的低くなっている。

このレベルの英語力のある方には是非ともおすすめしたい。

論考-007 変性意識—新興宗教・瞑想・ナンパ・短期勉強・気で飛ばす・サ道の共通項

最初に断っておくが、私の大学での専攻は科学史・科学論・科学哲学であり、疑似科学や超常現象などについては大槻義彦氏ほどではないにせよ、かなりの疑念を抱いている。

 

その一方で、世の中には気で飛ばされる人、催眠術にかかる人、心霊体験をする人、スピリチュアルにハマる人達が一定数いることは否定できない。

私は合気道家としても知られる、とある呼吸法の達人の道場に行ったとき、気で飛ばされていく人達を直に目にしている。(ちなみに、私は飛ばされなかった)

 

こうした現象を理解するのに一番適切な概念は「変性意識」(変性意識状態・Altered state of consciousness)だろう。

 

変性意識とは心理学の用語で、通常の状態とは異なる、一時的な意識状態である。「トランス状態」とも言い、この人間はこの状態にあると催眠や洗脳を受けやすくなる。

 

なお、変性意識をテーマに京都大学で博士号を取得された斎藤稔正氏の定義では、「人為的、自発的とを問わず心理的・生理的・薬物的あるいはその他の手段・方法によって生起した状態であって、正常覚醒状態にいる時に比較して、心理的機能や主観的経験における著しい異常性や変容を特徴とし、それを体験者自身が主観的に(もしくは他の客観的な観察者によって)認知可能な意識状態」である。

 

ちなみに、私も今までに変性意識状態を自覚的に経験している。他の人の経験している変性意識状態と同じものかはわからないが、明らかに普段と異なる状態である。以前投稿した「短期勉強による脳の覚醒状態」がそれである。

 

1.新興宗教

かつてオウム真理教が信者に洗脳をかけていたことは広く知られるところである。

 

オウム信者の脱洗脳に成功したことで有名なのが苫米地英人氏であるが、苫米地氏はこのオウムの洗脳の仕組みや変性意識について多数の発言・執筆をしている。なお、苫米地氏の著作にはうさんくさいものも多いので、安易に過信してはならないことを付言しておく。

 

オウム真理教の教義は灘高・東大理Ⅲ出身の教団幹部がつくり上げた洗脳体系だと苫米地は指摘しているが、信者を変性意識状態にするために延々と死体ビデオを見せる、薬物を使用する、電気ショックを与えるなどの行為を行っている。

 

苫米地氏によれば、オウム真理教の教義のタネ本は『ニルヴァーナのプロセスとテクニック』である。5年ほど前にこの本を買ったのだが、積ん読状態のまま日本に置いてきてしまった。内容はニルヴァーナ(涅槃)に至るための瞑想のやり方についてのものであった。

 

2.瞑想

瞑想もオウムでは盛んに行われていたのだが、瞑想は宗教に関係なく幅広くその効果が注目されている。

『世界のエリートがやっている最高の休息法』などの瞑想を 勧めるビジネス書や自己啓発書が多数出版されている。

 

変性意識のビジネス等の分野への応用可能性について語るには、洗脳以外の特性について触れる必要がある。

 

変性意識は他人をその状態に陥れ、催眠・洗脳するだけのものではなく、自らその状態を作り出し、自己催眠する手段でもあるのだ。

それによって記憶力の向上など、普段以上に脳を活用できると述べる本も多い。それが本当だとすれば、あらゆる分野に活用できるはずだ。

 

3.ナンパ

その活用分野の一つが「ナンパ」だろう。

 

社会学者で元ナンパ師の宮台真司氏はナンパの極意としてはっきりと「変性意識」を挙げている。

そして、宮台氏はナンパ師が変性意識に陥った状態を「黒光りした戦闘状態」と呼ぶ。

 

ここで思い出すのは、近年、多くの批判を受けながらも、アメリカの大学でPh.D取得・外資投資銀行出身という経歴と歯切れのいい恋愛論・テクニック(恋愛工学)から注目を集めている藤沢数希氏だ。

藤沢氏はまさにこの宮台氏の「黒光りした戦闘状態」とほぼ同義で「スーパーサイヤ人」という言葉を使っており、その他の理論でも意図的に変性意識関係のテクニックを取り入れているように見える。

 

4.短期勉強

私が変性意識を活用しているのは短期勉強においてである。

 

苫米地氏は高級官僚や東大卒は催眠にかけられる確率が非常に高いとしている。それは、勉強の中で変性意識に入るプロセスを身につけていることが多いからだそうだ。

 

私は大学入試で活用していないので、残念ながら東大出身ではないが、高校(一応、偏差値72程度)の定期試験の特定の科目では、これを無意識に利用して前日の一夜漬けだけで学年1位、3位、クラス1位などを取っていた。社会人になってから、資格の勉強などで特にこの状態を活用している。詳しくは→「社会人になってから短期勉強を趣味にした話」http://rhizome.hatenablog.jp/entry/2017/05/13/232519

 

「明らかに通常の状態では不可能な時間設定+カフェインの過剰摂取+試験当日朝にカレーを食べる」など、自分なりの入り方を身につけた。(ただし、入れないときもよくある)

 

5.気で飛ばす

一般的な変性意識への入り方は、深く呼吸をしながら脱力していくというものである。

 

それを知ったとき、気で人を飛ばしていくトリックが変性意識にあることがわかった。

 

冒頭で述べた某道場に行ったとき、まず最初に私は深呼吸をしながらの体操を1時間程度やらされたのである。「こうしていると体がぽかぽかしてきます」というような説明をしていたと思うが、これによって変性意識状態に陥らせ、催眠を利用して人を飛ばしていくのだろう。

初心者は変性意識に入り慣れていないためか、他の練習生と別の部屋でわざわざ長時間の呼吸法を練習するのである。私はそれまでに5種類の武道を経験しており、気で飛ばすことに懐疑的だったため、投げられることはなかったが、油断していると催眠にかかって飛ばされることもあるのだろう。

 

6.サ道

ユニークな変性意識への入り方として「サウナに入ること」もある。

 

タナカカツキ氏の語る「サ道」(サウナ道)ではサウナと水風呂を交互に入ることによって、合法的にドラッグをやっているような感覚になれる、としている。私も一回だけやったことがある。

 

なお、タナカ氏はこの「サ道」によって一時期聴力を失っているので、マネする際は要注意である。

 

参考→「タナカカツキのサ道 第3回導師(グル)」

http://modernfart.jp/2009/08/1454/

 

7.まとめ

「変性意識」はともすればバズワード的に使われかねないが、異常な心理状態が引き起こす現象を理解するのに役立つ概念に違いない。

 

 

参考:

斎藤稔正『変性意識状態(ASC)に関する研究』

苫米地英人『残り97%の脳の使い方』

宮台真司ほか『宮台真司・愛のキャラバン』

 

 

論考-006 「日本の公務員の給料は世界一」の誤謬

SNSを見ていたら「日本の公務員の給料は世界一」というコメントを目にした。

未だにそうした言説が広まっているのかと思い、ググったところ、確かに検索トップには、日本の公務員の平均年収は724万円なのに対し、アメリカ357万円、イギリス275万円、フランス198万円…などと書かれたページが出てくる。

私が住んでいるオーストラリアの公務員平均年収は360万円で、公務員としては「高額な給与」なんだそうだ。

しかし、オーストラリア居住者が見れば、調べるまでもなくこの数字が誤りであることがわかる。

なぜなら、オーストラリアの大卒初任給は平均で月収40万円を上回っているからである。年収360万円は大卒初任給以下なのだ。

 

では、本当に日本の公務員の給与額は世界的に異様なほど高いのか。

実際に、2017年の東洋経済紙の「公務員年収ランキング」で4位(2016年度1位)の東京都とその姉妹州のオーストラリア・ニューサウスウェールズ州(以下、「NSW州」という。)の給与を比較してみよう。

 

まずは初任給から。

東京都の職員採用ページによれば、新卒採用者の月給は約217,400円(地域手当含む)とされている。ボーナスも含め、年収では約350万円だろうか。

一方、NSW州政府の採用ページでは、新卒採用者の初任給は年収74,544豪ドル(約630万円)書かれている

つまり、新規採用者の年収はNSW州政府の方が年間約280万円高になっている。

 

次に、職員の給与の最高額を比較してみる。

東京都によると東京都副知事の給与月額は月額約120万円、公選の知事でも約145万円である。ボーナスと地域手当を加え、知事の年収は約2900万円と見積もられている(ただし、現在の都知事給与は特例条例によって半額になっている)。

一方、NSW州政府では政治家ではない行政官の最高年収が441,200豪ドル(3,700万円超)と、東京都知事の給与すら凌駕している。

 

平均年収は公式のデータが見つからないため、比較できないが、これらからNSW州政府の平均年収も東京都の平均年収を超えていることが推測できる。

 

また、オーストラリアの国家公務員ではより高額の報酬を得ているケースもあり、中には首相を上回る給与をもらっている人もいる。

例えば、Herald Sun紙によれば、首相内閣省のMartin Parkinson氏の年収は861,700豪ドル(約7,300万円)であった。

ちなみに、オーストラリア首相の年収は507,338豪ドル(約4,300万円)、日本の安倍首相の年収は約5,100万円と言われている。

 

オーストラリア以外の事情については調べる気がないし、旅行で得た程度の感覚しかないが、ネットで第一に出てくる公務員の賃金は、その国の物価を考えるとあり得ないような額が目立っている。

正確な数字は英語で検索してもすぐ出てこないので、こうした数字に惑わされがちだが、しっかりと情報源を見極めた上で、その信憑性を判断すべきだろう。

 

参考ページ等

東洋経済オンライン「最新!『公務員年収ランキング』トップ500」

http://toyokeizai.net/articles/-/169297

・東京都職員採用/人材育成・人事制度/勤務条件

http://saiyou2.metro.tokyo.jp/pc/training/welfare.html

・FAQs, NSW Public Service Commission

https://www.psc.nsw.gov.au/workforce-management/recruitment/nsw-government-graduate-program/faqs 

・東京都「都職員の給与の状況」

http://www.koho.metro.tokyo.jp/2016/11/kyuyo_01.html

・Remuneration & Benefits Guide 2015-2016, NSW Public Service Commission

https://www.psc.nsw.gov.au/employmentportal/compensation-and-benefits/2015/16-senior-executive-remuneration-management-framework/remuneration---benefits-guide-2015-2016/appendix/appendix-1

・Top public servants paid more than PM, Australia's military top brass, Herald Sun, May 15, 2016.

論考-005 ソロモン諸島を訪問して(ピジン語、そしてオイディプス三角形)

ガダルカナルの戦跡訪問を目的に、ソロモン諸島を訪問した。

ソロモン諸島でもそれなりに英語は通じるなと思っていたら、ソロモン諸島ではクレオール言語である、ピジン語が盛んに使われているのだった。

英語の発音が、carryを「カリー」、museumを「ミシウム」の様に発音していて聴き取りづらかったことに加え、街頭の広告も全て英語かと思いきや、よく見るとhouseがhaus、telecomがtelekomと書いてあるなど、スペルの違いがややこしい。

どこまでがピジンと呼べるのかはわからないが、バヌアツでもnightをnite、storeをstoa、waterをwotaなどと表記しているのが目立った。

 

クレオール言語のことは薄っすらとしか知らなかったので、この辺りの島々で盛んに使われていたのか、と感慨に浸っていた。

そして、バヌアツで名前だけ有名な「エロマンガ島」を横目に通り、この辺りのことについて色々考えていたら、行きにオイディプス(エディプス)の物語を下敷きにした村上春樹海辺のカフカ』を読んだためか、「グレゴリー・ベイトソンが研究していたのもこの辺りだったのかな」という疑問が頭に過ぎった。

 

結論から言うと、ベイトソンオセアニアの島民ではなく、バリ島民を研究しており、私はバリ島に2回行ったのに今まで全く以って認識していなかった。

 

高校の頃の愛読書ドゥルーズ=ガタリ千のプラトーの題名はベイトソンによるバリ島民の母子の性的な戯れの研究に由来していた。「プラトー」、すなわち「高原」とはベイトソンの打ち出した概念で、母が息子の性器をいじって興奮させるにも関わらず、クライマックスになるとそっぽを向くことで生まれる、頂点のない状態のことである。

千のプラトー』は『アンチ・オイディプス』の続編だが、言わずもがな『アンチ・オイディプス』の「オイディプス」ギリシャ神話の悲劇から名を取ったフロイトの概念である。

 

母に対する子の愛と、母をめぐるライバルとしての父というオイディプス三角形の構図はジャック・ラカンにも継承されていて、現実界象徴界想像界という概念は今日でも社会の事象を理解するのに役立つ。

母子の関係が裂かれたところに現れる父=ファルス的な象徴界の失墜は屢々指摘されているものである。セカイ系のはしりと言われるアニメ、「新世紀エヴァンゲリオンはオイディプス三角形の構造を露骨に出しているが、セカイ系と呼ばれる分野自体を東浩紀は「象徴界の失墜による想像界現実界の短絡」とした。

想像界現実界の短絡は安直に言ってみれば母子一体化の傾向なのだが、宮台真司氏も(氏に限ったことではないが)ラジオで女性の靴だったかを盗み、コレクションして捕まった男性について母子一体的な感覚から抜けられていないということを語っていたように記憶している。

 

直接、ソロモン諸島に関係することではないが、母親(という仮説が否定されていない人物)と性行為をする『海辺のカフカ』と、バリ島とほぼ同緯度の島がベイトソンを想起させ、そんなことを思い出させてくれた。

なんとなく思い立ったので、(分類のため、「論考」と銘打ってはいるが)メモ的に残しておく。

戦跡関係の話は気が向いたらまた書くが、ラバウル同様、戦争博物館は見物だった。