論考-007 変性意識—新興宗教・瞑想・ナンパ・短期勉強・気で飛ばす・サ道の共通項

最初に断っておくが、私の大学での専攻は科学史・科学論・科学哲学であり、疑似科学や超常現象などについては大槻義彦氏ほどではないにせよ、かなりの疑念を抱いている。

 

その一方で、世の中には気で飛ばされる人、催眠術にかかる人、心霊体験をする人、スピリチュアルにハマる人達が一定数いることは否定できない。

私は合気道家としても知られる、とある呼吸法の達人の道場に行ったとき、気で飛ばされていく人達を直に目にしている。(ちなみに、私は飛ばされなかった)

 

こうした現象を理解するのに一番適切な概念は「変性意識」(変性意識状態・Altered state of consciousness)だろう。

 

変性意識とは心理学の用語で、通常の状態とは異なる、一時的な意識状態である。「トランス状態」とも言い、この人間はこの状態にあると催眠や洗脳を受けやすくなる。

 

なお、変性意識をテーマに京都大学で博士号を取得された斎藤稔正氏の定義では、「人為的、自発的とを問わず心理的・生理的・薬物的あるいはその他の手段・方法によって生起した状態であって、正常覚醒状態にいる時に比較して、心理的機能や主観的経験における著しい異常性や変容を特徴とし、それを体験者自身が主観的に(もしくは他の客観的な観察者によって)認知可能な意識状態」である。

 

ちなみに、私も今までに変性意識状態を自覚的に経験している。他の人の経験している変性意識状態と同じものかはわからないが、明らかに普段と異なる状態である。以前投稿した「短期勉強による脳の覚醒状態」がそれである。

 

1.新興宗教

かつてオウム真理教が信者に洗脳をかけていたことは広く知られるところである。

 

オウム信者の脱洗脳に成功したことで有名なのが苫米地英人氏であるが、苫米地氏はこのオウムの洗脳の仕組みや変性意識について多数の発言・執筆をしている。なお、苫米地氏の著作にはうさんくさいものも多いので、安易に過信してはならないことを付言しておく。

 

オウム真理教の教義は灘高・東大理Ⅲ出身の教団幹部がつくり上げた洗脳体系だと苫米地は指摘しているが、信者を変性意識状態にするために延々と死体ビデオを見せる、薬物を使用する、電気ショックを与えるなどの行為を行っている。

 

苫米地氏によれば、オウム真理教の教義のタネ本は『ニルヴァーナのプロセスとテクニック』である。5年ほど前にこの本を買ったのだが、積ん読状態のまま日本に置いてきてしまった。内容はニルヴァーナ(涅槃)に至るための瞑想のやり方についてのものであった。

 

2.瞑想

瞑想もオウムでは盛んに行われていたのだが、瞑想は宗教に関係なく幅広くその効果が注目されている。

『世界のエリートがやっている最高の休息法』などの瞑想を 勧めるビジネス書や自己啓発書が多数出版されている。

 

変性意識のビジネス等の分野への応用可能性について語るには、洗脳以外の特性について触れる必要がある。

 

変性意識は他人をその状態に陥れ、催眠・洗脳するだけのものではなく、自らその状態を作り出し、自己催眠する手段でもあるのだ。

それによって記憶力の向上など、普段以上に脳を活用できると述べる本も多い。それが本当だとすれば、あらゆる分野に活用できるはずだ。

 

3.ナンパ

その活用分野の一つが「ナンパ」だろう。

 

社会学者で元ナンパ師の宮台真司氏はナンパの極意としてはっきりと「変性意識」を挙げている。

そして、宮台氏はナンパ師が変性意識に陥った状態を「黒光りした戦闘状態」と呼ぶ。

 

ここで思い出すのは、近年、多くの批判を受けながらも、アメリカの大学でPh.D取得・外資投資銀行出身という経歴と歯切れのいい恋愛論・テクニック(恋愛工学)から注目を集めている藤沢数希氏だ。

藤沢氏はまさにこの宮台氏の「黒光りした戦闘状態」とほぼ同義で「スーパーサイヤ人」という言葉を使っており、その他の理論でも意図的に変性意識関係のテクニックを取り入れているように見える。

 

4.短期勉強

私が変性意識を活用しているのは短期勉強においてである。

 

苫米地氏は高級官僚や東大卒は催眠にかけられる確率が非常に高いとしている。それは、勉強の中で変性意識に入るプロセスを身につけていることが多いからだそうだ。

 

私は大学入試で活用していないので、残念ながら東大出身ではないが、高校(一応、偏差値72程度)の定期試験の特定の科目では、これを無意識に利用して前日の一夜漬けだけで学年1位、3位、クラス1位などを取っていた。社会人になってから、資格の勉強などで特にこの状態を活用している。詳しくは→「社会人になってから短期勉強を趣味にした話」http://rhizome.hatenablog.jp/entry/2017/05/13/232519

 

「明らかに通常の状態では不可能な時間設定+カフェインの過剰摂取+試験当日朝にカレーを食べる」など、自分なりの入り方を身につけた。(ただし、入れないときもよくある)

 

5.気で飛ばす

一般的な変性意識への入り方は、深く呼吸をしながら脱力していくというものである。

 

それを知ったとき、気で人を飛ばしていくトリックが変性意識にあることがわかった。

 

冒頭で述べた某道場に行ったとき、まず最初に私は深呼吸をしながらの体操を1時間程度やらされたのである。「こうしていると体がぽかぽかしてきます」というような説明をしていたと思うが、これによって変性意識状態に陥らせ、催眠を利用して人を飛ばしていくのだろう。

初心者は変性意識に入り慣れていないためか、他の練習生と別の部屋でわざわざ長時間の呼吸法を練習するのである。私はそれまでに5種類の武道を経験しており、気で飛ばすことに懐疑的だったため、投げられることはなかったが、油断していると催眠にかかって飛ばされることもあるのだろう。

 

6.サ道

ユニークな変性意識への入り方として「サウナに入ること」もある。

 

タナカカツキ氏の語る「サ道」(サウナ道)ではサウナと水風呂を交互に入ることによって、合法的にドラッグをやっているような感覚になれる、としている。私も一回だけやったことがある。

 

なお、タナカ氏はこの「サ道」によって一時期聴力を失っているので、マネする際は要注意である。

 

参考→「タナカカツキのサ道 第3回導師(グル)」

http://modernfart.jp/2009/08/1454/

 

7.まとめ

「変性意識」はともすればバズワード的に使われかねないが、異常な心理状態が引き起こす現象を理解するのに役立つ概念に違いない。

 

 

参考:

斎藤稔正『変性意識状態(ASC)に関する研究』

苫米地英人『残り97%の脳の使い方』

宮台真司ほか『宮台真司・愛のキャラバン』